ナチスの経済政策(1935年当時の調査)16

第九章 統制経済の機構

 

第一節 はしがき

 

ナチスの経済政策は上述の確証に於て明らかにせる如く、資本主義制度の基礎の上に、しかもその自然の運動法則を制限統制することにある。しかも斯かる経済の自然的運行を人為的に統制制限することの可能性に関しては理論上幾多の疑問存在する次第であるが、就中このことはナチス経済政策のその後の発展とともに種々の破綻を暴露せる事によって証明されている。

即ち政府は各種の失業救済土木建築事業や、投資活動を容易ならしむるために固定資本の新設更新に対する租税の軽減を行い、或いはまたこの外各種人為的施設により、建築業、軍事産業等に関する生産財の生産を高めることに努力し、このために1934年第三四半期の如きは前年同期に比してその生産量は60%も増大したと称されている。それにも拘らずこの種の人為的活況に依っては決して正常的な景気の好転をばもたらし得ざるものと見え、未だに資本家の自発的投資活動を促すまでには至っていないのである。この結果政府は個人の発意を害するが如き政策をば避けることとし、以てナチス流の公営化政策の如きをば極度に否定した政策を採っている。1934年12月4日のかの信用制度改正の如きはその具現にして、従来の主張を裏切り、専ら投資活動殊に原料品国内生産のための投資活動を誘致する目的に資せんとしている。

ナチス統制経済の組織に関してその内容を見るに、その構成は前述せる職分国家の原理に基づいているもので、現在に於ては農業、手工業、商業、工業に従って三つの基本的組織が構成されて居り、そのあるものは未だ運用を見て居ないものもあるがその内容は極めて特異性を持って居るものもある。以下に於てその名称及び組織の内容について考察することにしよう。

 

第二節 農業統制の組織

 

(一)國食糧生産職分協同体

ナチスが農業統制の理想実現のための第一歩とし設立した組織は食糧生産職分共同体(Reichsnährstand)である。これは1933年7月15日の『農業の職分的結成の統制に対する国家権限に関する法律』(Gesetz über die Zuständigkeit des Reiches für die Regelung des ständischen Aufbaues der Landwirtschaft)及び同年9月13日の『國食糧生産職分協同体暫定結成に関する法律、並びに農産物の市場及価格統制方策に関する法律』(Gesetz über den vorläufigen Aufbau des Reichsnährstandes und Massnahmen zur Markt und Preisregelung für landwirtschaftlicher Erzeugnisse)並びに同年12月8日の『國食糧生産職分協同体の暫定的結成に関する命令』(VO. über den vorläufigen Aufbau des Reichsnährstandes)その他若干の関係法令に基づいて組織された。

今ここに国食糧生産職分共同体の成立をば前記の法律に従って説明すると次の如くである。

抑々「1933年7月15日の農業の職分的結成の統制に対する国家権限に関する法律」はダレ食糧農業大臣の就任後直ちに発布されたもので、これによれば「ドイツ農業職分的結成の新規定に関しては國政府は独占的立法権を有し、現在の各邦法による諸規定は國法的規定の作成を見るまで効力を有する」と規定している。この新規定を統一的観点から確実に実施し、且つ各邦各々が独立的な方策に従って各地域でこの規定を適用することを妨げる為には、統一的な国の規定の発布を必要としたのであった。

次いで同年9月13日の「國食糧生産職分協同体暫定的結成に関する法律並びに農産物の市場及価格統制方策に関する法律」によって國食糧生産職分協同体組織に関する経済的意義を指示している。國政府はこの法律によって遂行される統制を特別なものと見做し、且つ又、國政府は農業に対しては換言すれば農民階層に対してはただ一つの階層を要求することを明白にこの法律に於て宣言した。即ち國政府は他の経済に対してはこれと同様なる法律的統制を適用せんとする意図を有していないことを明らかにした。この法の内容を挙げれば次の如くである。

(1)食糧農業大臣は國食糧生産職分協同体の結成に対して暫定的統制を為す権限を有す。本共同体には農業協同組合、農産物商(卸売商及小売商)並びに農産物加工業者がこれの所属する。

(2)食糧農業大臣は、国民全般の経済状態並びに一般福祉に鑑み必要と認める場合には、國食糧生産職分協同体又はその個々の団体に対し、農産物の生産、販売、価格及価格差統制の権限を賦与することを得る。

(3)食糧農業大臣は、国民全般の経済状態並びに一般福祉に鑑みて必要と認める場合には、農産物の生産、販売、価格及価格差統制の爲、國食糧生産職分協同体内の諸団体及びその他農産物の生産販売に従事する企業諸団体を合同し又は現存する合同に参加せしむることを得る。これらの団体によって再製加工されたる生産物は、食糧農業大臣の管掌範囲に属する限りこの法律の意味における農産物と見做す。

(4)この全規定に強制力を付与する第九条の罰則規定は非常に重要である。

この法律によって追求されている根本思想をさらに強く現すために国務大臣ダレ氏は次の如き陳述をなしている。『即ち國食糧生産職分協同体結成のために今日法律的可能性を与えられたことは正に時宜に適した処置である。穀物市場の第一線に於ける市場状態の不充分さはこれを充分に証明する。農業者は決して通常の意味における企業者に非ざることを我々は知らねばならぬ。本共同体は自由価格形成の友誼に参加することは出来ないし、又参加してはならない。蓋し国民に対する本共同体の使命は非常に重大なるが故である。我々にとって必要なのはドイツ国民の血統の源泉としての農民であり更にドイツ国民に対する食糧品供給者としての農民である。それ故に農民がその生産物に対して出来るだけ高い価格を要求し、これによってその経営に対して出来るだけ大なる利益を獲得し得るか否かは問題でない。重要なのはドイツ的農民の権利によって彼の土地と深く結合し、彼の労働に対して正当な賃銀、換言すれば彼の生計を維持するに必要なだけの正統なる価格を取得することにあるのである。農民はその行動に際しては常にその任務は彼の民族、国民にその身を捧げることを銘記し、更にその任務は如何なる場合に於ても貨幣を設ける純粋な経済的なものでないことを心得て居なければならない。この目的の上に真の農業政策が樹立されなければならない。農民的経営を自由主義的、資本主義的経済組織へ嵌め込まんとする人は、或いは又最近に於て種々の部面から試みられたように農民的経営を次第次第に自由主義的方法に押しやらんとする人は、正にドイツ農民階級の精神を過り更にドイツ国民を過るものである。國食糧生産職分協同体結成に関する法律は基本的に農民に対して正当なる価格を与える組織に移る可能性を与える。これに対する一般的諸前提は共同体結成に関する法律の第二部に作成され、且つ「農産物市場、価格統制に関する諸方策」なる率直なる表示の中に把握された』と。

この法律の基礎に基づき1933年12月8日「國食糧生産職分協同体の暫定的結成に関する命令」が公布された。

これに基づいて「國食糧生産職分協同体」の内容は更に明らかにされたが、これはダレ氏によれば、「何よりもまず経済的大結合、即ちドイツ全経済における一生産部門の結合」を実現したものであり、工業におけるこの種の結合との差異は、それが大規模であり広範囲に亙っていることと、公法的性質を持って居る点に存するのである。

即ち國食糧生産職分協同体はドイツ農民及ドイツ農業並びに農業協同組合、農産物商(卸売商及小売商)、農産物加工業者の代表にして、それは公法上の自治体である。國協同体は國農民指導者によって他の規定が為されるまでその所在をベルリンに置く。

これが使命は、国民及び国家に対する責任に於て、ドイツ国民の建設、保護、強化に資する能動的支柱にその所属者を結合するにあるが、特に自治機関として本協同体はドイツ農民及農業、農業協同組合、農産物商並びに農産物加工業者を促進し、その所属者間の経済的、社会的関係を調節統制し、協同体内に包含されざる諸団体の対立が生じた場合には全体の幸福に役立つ協定を誘導し、且つ協同体の発達を図ると共に官庁に対し建言したり、専門家委員会の設置により官庁を援助するにある。他方食糧農業大臣は本協同体に対し特別任務を委託し得ると共に、本協同体は又その所属者の名誉上のことに関する監視義務を有する。

本協同体に強制包含されるものはドイツ國における土地所有者又は占有者、用益権者、又は農業企業家、自作農、小作農、農業労働者又は官公吏として現在農業に関係する人々のみならず、更に土地譲渡契約、又は土地譲渡契約又は土地譲渡契約と関係ある隠居持ち分契約により請求権を持つ以前の農場所有権者又は用益権者をも含み、これに農業協同組合農産物に関する商人及び農産物加工業者など極めて広範囲に亘っている。

本協同体は地域的に二段又は三段に別れ、各指導者によって統括され、全体の指導者として食糧農業大臣ダレがこれを統率する。

指導者の選出は団員の選挙によらずして、上からの指命方法による。各指導者にはその顧問として若干の委員が指名される。

以上の諸規定に基づき國食糧生産職分協同体は従来のドイツ農業会議、プロイセン農業会議所、及公法的農業職業代表(農業会議所、農民会議所)の地位に代わりその権利後継者として登場し、以上の諸団体は解体して本協同体に編入されることになった。

 

(二)各種農産物の統制

國食糧生産職分協同体は、恰も工業に於けるカルテルが独占資本家の利益擁護の組織である如く、農業有力者の勢力増大の機関である。だがカルテルは直接に市場統制の能力を持って居るに対し、こは無数の雑多な分子によって組織されている関係上、四方を監督しうる能力を持って居ない。従って正常なる価格実現のためには別の機関が必要である。

(1)穀物統制

農産物の統制組織中最も完備せるものは穀物に関する統制である。この中1933年9月13日及9月15日の製粉所合同法(Gesetz über den Zusammenschluss von Mühlen)に基づいて行った統制については前述の農業政策に於て述べた通りである。一つは穀物価格の決定を行ったものであり、後者は小麦、裸麦の加工を営んでいる製粉会社の結合を命じたるそれであった。

然るにその後1934年に至り穀物の統制はさらに一段の整備を加え、1934年6月27日の「穀物経済の整理に関する法律」(Gesetz zur Ordnung der Getreicewirtschaft)は穀物の統制に関し、國食糧農業大臣に対し従来より以上の権能を付与した。即ちこれによって彼は、穀物生産者の穀物販売量及販売方法、更に共同組合、取引商人及その他製粉企業者の原料の購入、製品の販売についてその量及方法をも統制し得ることになった。

この法律に基づいて1934年7月14日付『穀物経済整理のための命令』が発布され、この付録として『穀物経済団体の爲の規定』(Satzung für Getreidewirtschaftsverbände)及『ドイツ穀物経済中央連合の規定』(Satzung der Hauptvereinigung der Deutschen Getreidewirtschaft)が発布された。これに基づき穀物経済団体及びドイツ穀物経済中央連合が組織されることとなり、穀物に関する統制は1934年11月から以上の二組織に移るものと規定された。

穀物経済団体は国内穀物生産者、穀物加工者、穀物に関する商人、パン製造業者等にして穀物経済団体の地域内に住居を有する者より成り、全国を19の地区に分かち、各地区に一つの経済団体を組織するものである。

しかもこれが機関としては総裁、行政顧問、代表会議の三種がある。穀物経済団体の総裁には広範な次の如き権能が与えられている。(イ)組合員である穀物生産者の販売量の決定、(ロ)穀物穀物加工物及びパンの購入、販売の規制、(ハ)組合員が上記の諸商品を如何なる方面に販売し、また如何なるものから購入すべきかを決定する、(ニ)これらの商品に関する販売、支払い条件の決定、(ホ)組合員に対する獲得、販売量及最小取引量の確立並びに国民経済的に不要なる企業の停止、(ヘ)組合員の生産節義拡張の一時的禁止、(ト)組合員に対する会費を徴収すること、(チ)穀物及パン価格及価格差の決定、(リ)会則を実行するに当たり違反する組合員に対しては千マルク以下の秩序罰を課し得る等これである。

「ドイツ穀物経済中央連合」は、「穀物経済団体」と「小麦、裸麦経済団」(全国製粉經營をメンバーとするもので1933年9月15日の製粉所合同法に基づいて成立する)とによって成立するものである。

これが使命は穀物経済団体及びその他これに関する諸団体の活動を全体経済の必要と公共福利に基づいて統一的に指導して以てドイツ穀物及パンの供給を確保するにある。その機関として総裁及行政顧問が存在する。

(2)ミルクに対する統制組織

これに対しては1934年3月27日「ドイツ・ミルク経済の合同に関する命令」(VO. Über den Zusammenschluss der dertschen Milchwirtschaft)が発布された。この命令に基づき前記の穀物に関する経済組織と殆ど同様な組織が設置され、これによってミルクの生産、加工或いはミルク製品の製造並びにミルク及びミルク製品の販売者はミルク供給経済団体を組織した。全国を経済的見地から十七の区域に別ち、各地区に「ミルク経済団体」が組織された。更にその下に幾つかの「ミルク供給組合」が組織され、一つの供給組合に加入した組合員のミルク供給地域を決定する。ミルク供給組合の組合長は「穀物経済団体」総裁と同じような広汎な権能を持って居る。飲料用牛乳の価格等は全てこの組合長によって決定せらる。17の「ミルク経済団体」が更に「ドイツミルク経済中央連合」に結合している点も、前記穀物における統制に類似する。

ミルクの加工品であるチーズの統制に関しては「中央販売所」の「バター・チーズに関する国官庁」が設けられている。

 

第三節 手工業の統制組織

 

ドイツ手工業の統制に関しては1933年11月29日の『ドイツ手工業臨時組織法』(Gesetz über den vorläufigen Aufbau des deutschen Handwerks)があり、更に本法に基づき1934年6月15日『ドイツ手工業臨時組成に関する第一次命令』(Erste VO. Über den vorläufigen Aufbaudes deutschen Handwerks)が発布されて、以てその結合及び統制が確立されている。

ドイツ手工業臨時組成法は従来極めて複雑多岐の部門に亘ったドイツ手工業の監督統制の権を國の手に収めしめ、本法によりドイツ経済大臣及び労働大臣は全ドイツの手工業者に対し、組合を組織せしめる権能を与えられた。かくて従来職業規程第四節及び第四節Aにおいて規定されたる邦政府の機能は本法の施行と共に國経済大臣の手に移り、経済大臣はその機能を邦政府並びにその下級官庁に対して委任し得ることになった。國経済大臣並びに國労働大臣は手工業団体の結合管理の単純化を招来し、且つその活動並びに任務をドイツ國及邦、地方自治体の任務に関する新命令に適合せしめる為に手工業団体の解散並びに変更を行うべき機能を与えられた。しかも本法におけるドイツ手工業とは、手工業名簿に登録されたる全企業経営を包括するものである。本法に於てはドイツ手工業組合設立に関する詳細規定はなされず、これ等の点については國経済大臣及び國労働大臣の相互協調によって決定されることとなった。

1934年6月15日ドイツ手工業臨時組成に関する第一次命令はこの点を明瞭に規定したものである。本令の大綱は一、手工業組合 二、郡手工業者協議会 三、名誉裁判制よりなる。

(一)手工業者組合

(1)手工業者組合は手工業名簿に登録されたる同一若しくは類似の手工業者の地域的な公法団体にして、その設立は手工業会議所によってなされねばならぬ。

本組合の構成員としては手工業名簿に記載せられている手工業者が強制的に加入義務を課される外、更に自発的に加入を認められているものがある。即ち、(イ)曾てある手工業部門に於て独立の手工業者として活動し、他の営業活動を為して居ないもの、(ロ)賃労加工業者、家内工業者、仲介業者及類似の職業従事員、(ハ)農業若しくは工業に於て対価を受けつつ従業している手工業者、(ニ)職業学校の教師これである。

(2)手工業組合の構成を見るに、先ず組合は組合会議を構成する、組合会議は組合員より占拠された代表者によっても成立し得る。組合は組合長(オーバーマイスター)によって指導される。この組合長は組合に属する専門組合の声に聞いて手工業会議所これを任命する。その他の役員はドイツ労働戦線当局との了解の下に手工業会議所がこれを決定する。以上の役員の外に若干の顧問が任命される。組合の法律上その他の代表はこの組合長が任ずる。

(3)手工業者組合の任務については、同命令第四十三条から第四十八条に規定されているが、その大要は次の如くである。(イ)共同精神を涵養し、職分協同体の名誉を守護すること、(ロ)手工業会議所の規定により、徒弟制度を統制し、以て、徒弟の指導、技術的、職業的、道徳的教育の実施、(ハ)独立手工業者とその徒弟間の紛争に対する制定、(ニ)職人検定の施行、(ホ)職業関係者の技術的、職業的、道徳的の促進、特に職業学校の維持、設立、入学既定の発布、(ヘ)手工業部門に役立つ所の経済的施設、特に組合制度を促進すること、(ト)手工業会議所と共同し。労働方法及び企業経営改善に関する規定の作成に対する協力、(チ)職業上の新聞の刊行、(リ)手工業各部門の事件に関し、当該官庁に対し献言及び報告をなすべき事、(ヌ)手工業以外の関係団体との接触等これである。

以上の外手工業者組合は命令第四十三条より第四十八條に記載されていること以外の事項を為すことを禁ぜられ、特に経済的営利行為を為すこと、カルテルを作ること、価格に対する内部的規約を作成すること等は厳禁せられている。

手工業者組合の監督をば手工業会議所が行い、特にこれが法律や規定の遵奉されるように注意する。尚この外に組合によって制定維持される組織や制度も亦手工業会議所の監督の下に立つ。会議所は組合の事務及び会計状態を常時監視し、必要なる書類を検査し、組合の集会並びに組合の機関等に関与することを得る。

 

(二)郡手工業協議会

郡手工業者協議会とは手工業会議所によって指定された一定地区内に住所を持つ所の手工業組合が手工業会議所によって結成せしめられたる団体である。

協議会の構成は会長、顧問、協議会委員より成り、会長は手工業会議所により任命され、会長は委員の中から顧問を選ぶ、しかもその委員は当該手工業者組合の組合長よりなるものである。

協議会の任務は当該組合の共同重要事項を処理し、また要求に応じて組合の事務を執行せねばならぬが、就中次の事項を特に留意せねばならぬ。

(1)当該地区の手工業に関する凡ゆる行政施設につき、規定に基づき認められている限りk地方官庁との協力、(2)当該区域に存する他の職業団体との接触、(3)当該官庁及手工業団体に対する報告及び献言、(4)手工業合議より委任されたる事務の遂行等これである。

 

(三)名誉裁判制

名誉裁判制は組合員が公共利益に反する行動を為したる場合に適用せられるもので、その判決は名誉裁判所並びに名誉裁判控訴院によってなされ、前者は手工業会議所に、後者はドイツ手工業及び工業会議所に属する。名誉裁判所の裁判官はドイツ司法大臣によって経済大臣の同意を得て任命せられ、その陪審員は経済大臣によって任命される。裁判官の数は裁判所は三名、控訴院は五名より成る。

名誉裁判による罰則は戒告、譴(けん)責、一千マルクまでの罰金があり、重罰に対しては一定期間或いは永久に亘る組合員たるの資格剥奪が行われる。

 

(四)手工業会議所

手工業会議所は手工業組合及びこれらによって統轄せられるドイツ全手工業者を指導監督すべき中心体である。これが任務は手工業組合、郡手工業者協議会の創設、規約の作成、監督等にある。

手工業会議所に関する具体的な規定は未だ発布されないが、ナチス政府は複雑な手工業の直接統制を避け、ドイツ手工業者の自治統制をなさしめんとして、この手工業会議所と手工業会議を設け、これ等を通じて間接的なる統制をなさんとしたものである。

以上ドイツ手工業臨時組成に関する機関並びに運用の大要であるが、本法に規定された手工業組合とドイツ産業統制法における手工業部との関係は未だ判然せぬ状態である。