ナチスの経済政策

ナチスの経済政策(1935年当時の調査)17(完)

第四節 一般産業統制組織 自由主義による無政府的経済原則を打破し、国民の全経済力の計画的な総括を為すことを目的とするナチスの全産業に対する統制組織は如何に構成されたか。 抑々ナチス制覇前のドイツには全経済事項の諮問機関として臨時経済審議会(Vo…

ナチスの経済政策(1935年当時の調査)16

第九章 統制経済の機構 第一節 はしがき ナチスの経済政策は上述の確証に於て明らかにせる如く、資本主義制度の基礎の上に、しかもその自然の運動法則を制限統制することにある。しかも斯かる経済の自然的運行を人為的に統制制限することの可能性に関しては…

ナチスの経済政策(1935年当時の調査)15

第五節 公債政策 ドイツに於ける中央及地方債の1933年3月末の現在額については第一節第三項に於て明らかにした次第であるが、これ等の公債に対する政策は然らば如何になされたか。 抑々ナチスの公債政策は第二節のナチス財税制論中に於て述べている通り利子…

ナチスの経済政策(1935年当時の調査)14

第三節 ナチスの政府編成の予算内容 財政政策はドイツにとって宿命的問題だとシュンペーターが云ったことは、国民革命と称して登場して来たナチス政府にとっても妥当し、彼等の革命なるものも何ら事態の変化を示すものではなかった。 1933年~1934年度の最初…

ナチスの経済政策(1935年当時の調査)13

第八章 財政政策 第一節 世界恐慌とドイツの財政 第一項 応急的諸対策 世界恐慌のドイツ経済に対する影響はひいて、その財政上にも極めて重大なる危機をもたらした。蓋し税収入の激減にも拘らず、失業の増加に伴う社会政策費関係の増加はドイツの財政を極め…

ナチスの経済政策(1935年当時の調査)12

第四節 アンチインフレーション政策 ナチスのデフレーション政策は対外的には全部的なモラトリアムを実施して、金本位制度を維持したにも拘らず種々の破綻を現わさざるを得なかった。これを対外的に見ても各種の閉鎖マルクによる事実上の金本位制の打破が行…

ナチスの経済政策(1935年当時の調査)11

第七章 ナチスの金融政策 第一節 戦後に於ける金融政策の帰趨 大戦後ドイツを襲った未曽有のインフレーションも、幾多の過程を経て発布された1924年8月30日の新貨幣法及新銀行法に依り一先ず平静に帰するに至った。この改革により、一般商取引も価値安定せる…

ナチスの経済政策(1935年当時の調査)09

第六章 外国貿易政策 第一節 貿易政策とアウタルキー ドイツの再農業化政策は外国貿易との関係より見れば次のことを主張するものである。即ち工業用の農業原料品の自給並びに国内市場を国外市場より重視すべき事、更に対外支払い勘定がもたらす資本的隷属は…

ナチスの経済政策(1935年当時の調査)08

第五章 企業政策 第一節 カルテル政策 農業に対するナチス政府の保護的統制の周到なる施設については大体前述の如くである。ナチスの農業偏重の傾向については勿論ドイツ資本主義経済の言段階的諸情勢柄の要求ではあるが、尚見逃し得ざるはナチスの政治的地…

ナチスの経済政策(1935年当時の調査)07

第二項 農産物自給の爲の保護政策 (1)農産物保護の一般化 -農産物の自給政策、即ちナチスのアウタルキーの理想は、リスト以来の伝統を持つドイツに於いては戦後特に著しくなったことは前述の如くである。この爲に従来採られた政策は農業保護関税政策によ…

ナチスの経済政策(1935年当時の調査)06

第四章 農業政策 第一節 ナチスに於ける農業問題の地位 ナチスの新ドイツに於ける経済を最もナチス流に特徴づけるものは経済政策の重点を農業局面に置いた事にある。これはナチスの政治的地盤が中間経済層、就中農民に存して居た点からして当然の事であろう…

ナチスの経済政策(1935年当時の調査)05

第四節 各種労働政策立法 ナチスの労働政策目標は、その綱領にも見られる如く「階級イデオロギーの打破」「企業家並びに労働者の単一戦線の樹立」によって、より良き社会秩序たる「職分協同体的社会秩序」を建設せんとするにある。このイデーは決して社会主…

ナチスの経済政策(1935年当時の調査)04

第三章 労働政策 本章に於いて取り扱う労働政策は主としてナチスの失業対策に関するものであるが、これ独り労働者階級のみに対するものでなく、広くドイツ産業部面全般に対する施設でもある。従って斯かる失業対策の意義より見て之を労働政策として取り扱う…

ナチスの経済政策(1935年当時の調査)03

第二章 ナチスの経済概念 ドイツの経済政策を云々する為には、これが遂行者たるナチスの経済観念を一応知ることを便宜とする。ナチスの経済観念は、その本質に於いてよし誤って居るにしても、ともかく従来我々が学んだ経済観念に対して一応の批判を与えて居…

ナチスの経済政策(1935年当時の調査)02

第二節 世界恐慌とドイツの政治機構 前述の如き経済機構の変質に伴い、その延長であり、集中的表現たる、ドイツの政治機構は如何なる変化を発見したか。恐慌後におけるドイツ正常を詳細に理解するには一応遡ってワイマール憲法創設当時のドイツを省みるの必…

ナチスの経済政策(1935年当時の調査)01

経済資料通巻第195 ナチスの経済政策 東亞経済調査局編 1935年 凡例 一、本書はナチス政府成立後のドイツ経済政策の重要事項を、同政府発布の法令に基づいて記述したものであり、その期間は主として1933年1月より1934年12月に亙る事項に属する 一、本書は全…

“国家社会主義” ドイツの実相

既にお気づきの読者も多いと思いますが、私はある主張をするために、或る本の一部を抜き書きして自分の主張を正当化することの危険をよく知って居り、そのため、長編の本でも私が言いたいことを言っている部分、そうでない部分も含めてすべてを公開しようと…