筈見一郎著 「猶太禍の世界」22(完)

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ヒトラーの排猶主義の徹底

ヒトラーは一九三八年より徹底的な排猶方針を実行し始めた。しかし、それは、彼が久しき以前から計画していたものを実行したに過ぎなかった。以下は、一九三三年の十月、ドイツが、国際聯盟を脱退した直後の話である。

ゲッベルスは、彼の任務としてヒトラーの聯盟脱退の命令が実行された一伍一什を報告に来た。

ヒトラーは、一文字に堅く口を噤(つぐ)んで、その報告を仔細となく聴取した。

それが終わるや、彼は始めて口を開いた。

「聯盟の手合いは孰れも揃いも揃って感心な船員どもじゃったのう。あれらは決して実行に移らなかったからね。いつも、口先のみで異議ばかり唱えていたね。そうして、いつも機宜の処置が講ぜられず、時期ばかり失しているんだよ。あいつらが戦いたかったら戦うがいいや。その方がこちらも好都合さ。

一体イギリスのサイモン(当時の外相)と言うのは何だい? あれは猶太人と言うが本当だろう?

いや、あれは猶太人に決まってるさ。そうしてドイツを亡ぼそうと企んでいるのだよ。

フランスのボールタールは何じゃい? あれはどういう種類の人間かね?

矢張り猶太人じゃないか?

そんなものに操られて国際聯盟なんか七里けっぱい(誰も近づけない、寄せ付けない処の喩え)だ。

ドイツは青春の血に富む。猶太の毒汁を受けてのみいては、堪らんよ。

だから、僕は思い切って、僕の外交に於けるそうした猶太の人為的の橋は焼き落してしまったのだよ。

かくしてこそ、始めて自分は、西欧諸国に優越なドイツを建設し得るのだ。

僕は成功を確信している。なぜなれば、マルキシズムを始め、凡てのデモクラシーやリベラリズムの表面ばかり偉そうに見える人物の肚の底を聯盟を通じて既に看破し得たのであり、彼等の国々の弱点を底まで究め得たのだからね。

我が国家社会主義の成功は、要するに、ブルジョアジーや、彼等の信ずる政治的理想の永久に挽回し難いこの世からの葬送を、しかと認識している点にあるのである。

今に見よ、未曽有の雪崩がこの世界に押し寄せて、現在の政治地理は全く趣を異にしてしまうからね。

刻下の不安な欧州の国家や社会の秩序というものは、偉大な爆発に崩壊を受ける機会が迫りつつあるのじゃ。

中にも聯盟の如きは猶太式デモクラシーの機構中でも一番新しい筈なのに、もう、すっかり腐敗しちょる。他は推して知るべしじゃ。

予はドイツ国民をして偉大なる道筋を行かせる責務を大いに感じている。

 

アンシュルス(独墺統合)以後とヒットラー

一九三四年の初めのことであった。

リッベントロップはヒトラーにこう話しかけた。

ポーランドはドイツが西部ヨーロッパを処理している間に果して中立を守るでしょうか?」

ヒトラーは莞爾(かんじ:にっこりと笑うさま)と、ほほ笑んだ。

「ドイツが、アンシュルス(独墺統合)を強行したら、ポーランドはどう出るであろうかね。」

「それよりも、その場合、問題になるのはイタリアの態度でしょう?」

「イタリアには諒解を勿論遂げて置く必要があるよ。その結果、却ってイタリアはドイツの友邦となる可能性があるよ。

ドイツは、イタリアとあくまでも盟邦関係を結ばなければ、ドイツの地位の争うべからざる向上は期し難い。将来は極東の日本とも提携してソ連を牽制する必要もあるね。」

「それでは、フューラーは、ポーランドの援助を受けてソ連を討とうとされるのですか?」

「ロシアは、却々(なかなか)難しい相手だよ。ロシアを攻撃するなんてことには恐らくならないだろう。ロシアさえ不了見をしなければ。

兎に角、ドイツとしては、ロシアと戦っては損だなあ。そう、僕は直覚するよ。

それよりかは、ポーランドの分割なんかは易々として行われるよ。

自分は本当の肚を言うと、ポーランドと心からして結ぶ考えはないね。ポーランド自身の肚が汚いからね。あれは英仏の猶太閥に左右される可能性が、あまりに多いと認められるからね。だが、ソ連ポーランドを分割しあうことも却々(なかなか)その影響は大きいよ。

正直のところ、ドイツの失うところも少なからずだね。出来れば、それを避けたいと思うがね。何しろ英仏のソ連への策謀もあるから、そいつも十分考慮しなければならん。

兎に角、愈々となれば、ソ連をこちらに積極的ではないが、好意的に味方させるのは容易だよ。

かく言えばとて、ドイツが必ずしもコミンテルンの主義を認めることにはならないよ。イデオロギーは違っても、国と国とは時に握手もなし得るさ。そこだて、外交の六つかしいのは。

英国の決意はいつも、にぶり勝ち。君も知っている通り、フランスの内部はマソンの跳梁(ちょうりょう)であのざまじゃ。戦わねばならぬ暁が来たら、フランスは恐らく鎧袖一触(がいしゅういっしょく忽ち敗北する)じゃろう。あれの内部が、しっかりして居たら、そうして、マソンの勢力が及んでいなかったら、フランスは強敵だがね。

その場合には、却ってドイツとイデオロギーも同じになり、英国の悪企くみのおだてには乗らないじゃろ。却ってドイツに味方するかも知れぬ。しかし現状じゃその正反対さ。思えばフランスもよい政治家がなくて気の毒なものさ。」

「いざ英独戦争となればどうなるでしょう?」

「英国は勿論絶対にドイツの敵にあらずさ。

堅固な意思のある方へ運命は追随するものだからね。」

 

英国は最早駄目だ

ヒトラーは唾をぐっと呑み下した。

「大英国は今や廃頽(退廃)と瓦解の極に達しているよ。それに堅固な意思を持った指導者がないしね。今に英国はその優柔不断を後悔するに決まってるよ。

今にドイツの指導下に、イタリアとの完全なる了解の下にオランダ、ベルギー、フランダース、北フランス等の西欧同盟と、それから、デンマークノルウェイ、東部ポーランド等の北欧同盟が出来上がるさ。事局の発展次第ではバルカンもそうなるかも知れない。

ソ連に関しては、ドイツが赤化することは決してあり得ない。却ってソ連の方がドイツの国家社会主義に大いに傾く可能性があるよ。最早、その兆候さえ見えてきているじゃないか?

そこに、ドイツとソ連とは手を握り得る点が又あるのだ。

この点、少なくとも外交上、ドイツはソ連と結ばざるを得なくなるだろう。だが、これは全くデリケートな問題だから、君極秘に付して置かなければいけないよ。真の外交の機微がそこに横たわっているからね。ソ連が汎スラヴ主義さえ守り、世界赤化を思い切れば、独ソに将来衝突はないだろう。

それかといって、主義に於いてソ連とどの程度たりとも、道連れとなる意志はない。外交は外交、主義は主義だ。君、混同してはならないよ。

ソ連よりも寧ろ警戒すべきは英米の潜航的なマソン思想だよ。

両国とも、猶太思想で固まっている。良心と言う言葉は猶太性のお体裁だけのものだ。」

 

ヒットラーの排猶はその処世哲学

ヒトラーは猶太思想を何より嫌っている。彼は一九二三年の四月一日から意を決してドイツのジュウの徹底的清掃をはかるに至った。一九三八年のプログラムでは、それがスケールを更に増大した。猶太主義さえ攻撃すれば、全世界の思想を健全ならしめ得ることをヒトラーは知っているのだ。

要するに、ヒトラーの今次の戦いの目的は猶太人に対して善処されているのである。猶太人はローマ帝国の敵であった。この意味でムッソリーニヒトラーの聖戦に欣然(きんぜん)と参加したのであった。

猶太人はエジプトやバビロンの敵でもあった。

だから、イラクが今猶太を代表している英国に敢然雄々しくも立ち上がり弓を引き始めたのである。現在の経済組織なるものはジュウの創造に係るものなるをヒトラーは誰よりもよく知っているのである。

猶太財閥が今全世界の上の超国家たるを彼は是非永久に打破しなければならぬと思っている。猶太人は何一つドイツ人と共通なところあるを認め難いと彼は言っている。シオンの長者のプロトコールヒトラーは読んで大いに驚き入ったのであった。フリー・メーソンやそれの別動隊であるロータリーの巧妙な奸策もヒトラーは既に看破しているのである。アリアンとジュウとは月と鼈(すっぽん)の如く離れている。

この二つは決して合致し難いことを彼は悟っているのである。