国際秘密力21

第21章  『シオン長老の議定書』下

 

自動車王で有名なヘンリー・フォードは、『ディアボーン・インディペンデント紙<4> 』と呼ばれる彼が所有していた新聞紙上で、マルスデンが準備したのと同様の解説と注釈で補完したプロトコルを発表した。これらは1920年から1922年まで連載された。またこれらは本の形にまとめられ、1920年代では常にベストセラーを維持し、聖書を除くと米国での発行部数過去最高の大ベストセラーとなった。

フォードは長い間無党派の個人として、世界を支配すべく画策していると彼が考えた国際ユダヤ人に対抗して戦った。彼がその独立した財産を、自動車組み立てラインと『T型モデル』を完成させることにより作ったのは誰もが知っていることである。しかし1920年の後半にT型モデルが旧式となり、新しいA型モデルを生産するための再設計と工場再編が必要になった時、フォードは資金を調達することができなかった。

いくつかの奇妙な理由によりフォードは公式に反ユダヤの立場を放棄し、彼が手を下せる範囲のすべての『プロトコル』本を回収した。その回収が行われた時、これまたいくつかの奇妙な符合により、新モデルの生産と工場再編のための資金が利用できるようになった。

この事件はすべてIJCが仕組んだと、私は強く思っている。この様な事件で常に興味深いのは、IJCのメンバーまたはその手先たちは、処置にあたって決して金を浪費しないということである。殆どすべての場合、彼らは逆にかなりの利益を手中にする。

米国国民の中に反ユダヤ的感情が強まるにつれて、米国の10年代後半から20年代初めの世代の中に、ク・クラックス・クラン(KU KLUX KLAN)と呼ばれる組織が台頭してきた。その組織は当時も今日も、KKKまたはクラン(KLAN)の名で良く知られている。この名前は、南北戦争後に南部で起こった『白つばき団(Knight Of The White Camelia)<5>』に似た組織の復活という意味から来ている。

このKKKは、黒人および『ならず者』、『流れ者』を駆逐することを目的に設立された。『ならず者』や『流れ者』は、南北戦争直後に古い貴族や『相当な身分の人々』を襲撃した海賊や盗賊に対する俗語である。

この結社は休眠状態にあったが、自分たちの生活様式が壊されるのを恨む南部の人々により10年代の間に復活し、そこから国中に広がって行った。ウォーレン・G・ハーディング大統領は、彼らの票が無ければ当選できなかった。そして彼らの覆面姿は小数派の人々を度々恐怖に陥れた。

これは全くの余談であるが、私の経験談をお話したい。1940年ごろ、ユダヤ人であった軍の医療関係者について良く覚えていることがある。彼はユダヤ人であったため、サン・アントニオのある地方で最も良いホテルでは入場することも予約することもできなかった。そのホテルはフランクリン・ルーズベルトの下っ端の手先としてはナンバーワンの男、私は後にこの男をその著書により信用するようになるのだが、その男が経営していた。私の母は経営者との間を仲介してやり、そのユダヤ人は母の客としてホテルに泊まることができた。

彼ら少数派の人々については同様のことが至るところで起きている。表面上人類平等を公言してはいるが、差別的なことは日常行われている。例えば私の知っている何人かは、黒人系の人がいない個人的な会話の中では、黒人のことを殆どいつも無礼で軽蔑的な調子で、『黒んぼ(Schwarzers)』と蔑んでいる。つい最近まで最も敬意を払われているあるカントリークラブではユダヤ人の入場を断っており、もし入場を認められたとしても、それは全く名ばかりのことであった。

今日ユダヤ人たちは米国で権力を獲得した。私の意見であるが、彼らは一上流階級として、この国でかって見た中で最も強烈で、最も狭量な人種差別主義者となり、しかもあらゆる美辞麗句を連ねて偽善的*に『平等』を公言している。私は彼らの偽善性については極めて気に掛かっており、それに比べれば彼らの権力についてはそれほど気になっていない。

*偽善(hypocricy)は英語では日本語のニュアンスとは違い、自分がしている良くないことを他人がすると非難する、そう言う人間を指す言葉である。例えば、自分は賄賂を貰っておきながら、人が賄賂を貰うことについては舌鋒鋭く非難する政治家は当に英語で言う「hypocrite」である。日本語のように善人を装う悪人、と言う意味とはかなり含意が異なる(燈照隅註)

さて先程の問題に戻ろう。再びギルバートから地図11を引用した。この地図を是非じっくりご覧頂きたい。私の本文とこの地図とは多少食い違っており、ギルバートは、プロトコルが最初に出版されたのはレニングラードだとしている。

しかしこの事は地図に示されている広い地域の事柄には実質的に影響せず、私はこの地図を全面的に信頼している。私はこの地図上に引用されている次の文節を特に評価している。これはロンドンのタイムズ紙が1920年に社説に掲載したものであり、当時のタイムズ紙はIJCとは無関係で独立に経営されており、世界でも卓越した新聞社であった。

 

地図 11 シオンの議定書の発行地とその時期

 

『我々はこれまでの悲惨な年月を通して、ドイツの世界支配のための秘密結社を破壊し根絶させるべく苦闘してきた。しかしそれは結局、より一層秘密のベールに包まれた、さらに危険な別の結社をその下に見つけ出しただけではないだろうか?
我々は国家のあらゆる組織を最大限に働かせて、ドイツの支配による平和 (PAX GERMANICA)は免れたものの、結局、ユダヤの支配による平和(PAX JUDAICA)に落ち込んだだけではないのか』

読者は極めて多数のプロトコルが発刊されていたのを想像できると思う。しかし今日の米国では、ただの一カ所の図書館もこの本を置くことを認めようとはしない。希書類を扱う商人たちもこの本は得られないと言う。

多くの日本人が知っているように、1937年ごろマルスデンの本の日本語訳の出版が試みられた時、すべての本はIJCの利益のために買い上げられ、そして破壊された。

今日『自由世界』と考えられている社会で、この本を購入または手に取れる一般的な読者は皆無である。そしてこの話を締めくくる事件として、ロンドンのタイムズ紙はIJCの手中に落ちたことを報告しておこう。タイムズ紙および一連の出版社、そして今日の世界中のラジオ・テレビ局は同じIJCの経営下にある。

私はまさに最近、マルスデンの仕事の復刻版を頂いた。しかしマルスデンの本の内容が本書の著述に影響を与えることを避けるため、私はその本にまだ目を通していない。本書のすべては私自身の思想であり、私の信念と考え方を表明したものだからである。本書の著述が終了するまでは、他の人々によって色付けされたり、変更させられたりすることを私は望んでいない。私は、本書が刊行された後にマルスデンの英語版を読み、その時に本書の主題に関してさらなる主張論点を持ちたいと思っている。

本章で私が言いたいことのすべては、『プロトコル』は的を得ていたに違いなく、そのため世界中のユダヤ人はその出版を止めさせるためにIJCに加担する必要があったということである。その結果この本は今日まで発禁となって来たのであり、証拠の地図に示されているのはこの『出版禁止以前』の普及状況である。

独立した出版社に対する陰湿な破産の脅しは、今日でも強力な武器である。私はただ、どうしたらIJCおよびそのメディアに対する攻撃を続けられるだろうかと思うばかりである。出版界にはまだ勇敢で信念のあるしっかりとした人々が残っているに違いないのだが。少なくとも、世界の中で唯一言論による真の戦いが行われている場所である日本のような国ではまだ残っていると思う。この様な活動はもはや米国では日の目を見ないであろう。

さて次に、印刷物、出版物およびあらゆる形態のメディア全般について論じてみよう。そこには人類を支配する鍵が横たわっている。

 

【訳注】

 <4>  ディアボーン・インディペンデント紙:ディアボーンデトロイト付近の都市名で、フォードの自動車工場がある。自動車工場でのストライキを通して国際ユダヤ人の活動に疑問を持ったフォードは、自ら一連の出版活動を始めた。1918年にこの新聞を買い取ったが、編集方針への妨害を防ぐため一切広告は載せなかった。慎重な準備期間の後、1920年5月22日よりユダヤ問題を取り上げた。
ユダヤ側からの様々な妨害や脅迫にも拘らずフォードは活動を進め、1920年代半ばには全米発行部数50万部にまで達した。
またユダヤ問題の記事は本として出版され、16カ国語に翻訳され世界にも広く配布された。当時ユダヤにより筆舌に尽くし難い疲弊に苦しんでいたドイツでは、この本を学校教育にも使用した。 (『国際ユダヤ人(徳間書店)1993』)

 <5>  白つばき団:南北戦争後、黒人に対する白人の優位を確保するために米国南部各地に起こった秘密結社。