文明のアイルランド起源 HPより17

ヒラム・アビフ:寡婦の息子

ヒラムは「寡婦の息子」と言われた。この逸話は天界を指す。この場合、ヒラムは太陽であり、寡婦、つまりその母は、アプト、タウルト、ヌイト、イシス、ヴィーナスなどとして知られる天界の至高の女神であろう。更に、「寡婦」と言う言葉はアイルランドの女神エリを指すとも言える。単に、最も初期の女神を指す奥義の隠喩である。

ヒラムは歴代誌にはダン族の娘たちの一人の女性*にできた息子として記述される。キリスト教徒はこれを古代イスラエルのダン族を指すと考えるようにされてしまっている。しかし、我々はこの言葉に何かそれ以上のものがあるのでは、と疑問を持ってもよい。付け加えて、ダン族が蛇を家系の印として持って居ることに何か重要性はないのか? 著者は実際そこに、ドルイド教とのかかわりの根拠があると思う。所謂イスラエルの12部族の名前がアイルランドの名前であるだけでなく、その部族の様々な記章がドルイド教に由来することもある。語根dan(そしてそれに関係するdon、dona、adon、dunなどの語根)は例えば世界中で見出すことが出来る。特に「ケルト人」がよく出入りする地域に明らかである。それはDanu、つまり有史以前のアイルランドの神で知られているもっとも顕著な女神の一人に由来する。その名はアヌAnu或いはアナAnaも指す。この形でこの名前はバビロニアやシュメールにも現れるのである。この名前は天界を暗示する。これが蛇がダン族の印である理由の一つである。蛇は黄道ではりゅう座Dracoである。りゅう座は比喩的に、古代の占星術師には最も神聖と考えられた北限の星々を守る。この偉大な宇宙の蛇は、しかしながら、女性の記号であった。女性の女神を描くエジプトのヒエログリフは蛇 ―「魔法の婦人」の称号を持つコブラである。これを考慮すると、古代イスラエル人として言及されるダン族は、実際には占星術師、即ちアリアンであったことに疑う余地は非常に小さい。
*原文:the son of a woman of the daughters of Dan 日本語訳聖書では、「ダンの娘たちのうちのひとりの女から生まれた者」

ヒラムは偉大なフェニキアの街ティルスで認められたと言われる。然しこの町はアイルランド語の名前を持つ。ティルスTyreとタラTaraはどちらもエリEriの名前から出来た。しかも、上述のように、エリの名はアイルランドの名前の起源であった。エリはギリシャではヘラHeraである。この名も今でもterraやterrestialのような名前に大地を表す言葉に名残をとどめている。

 

ヒラムとオシリス

オシリスは混沌の中から生まれ、その誕生の時、「地上のすべての支配者が生まれた」― と宣言する声が聞こえた… オシリスは世界中を旅し、その住民を文明化し、農業の技術を教えた。しかしエジプトに戻った彼に嫉妬したテュポンTyphonは策略をめぐらし、晩餐のさ中に丁度彼の身体が入る箱に彼を閉じ込めた。彼は監獄に繋がれ、それはナイル川に投げ入れられ、海まで流された。」
―W・ウィンウッド・リーデ*著「イシスの仮面・ドルイドの謎(1861年)」
*William Winwood Reade

 

ヒラムはオシリスとも関係して来た。これら二人の人物の伝説の比較で多くの類似点が明かされる。

・どちらも外国に行き、その知識、技術、科学を分け与えた。

・どちらの伝説でも貴重な持ち物がある:ヒラムには秘密の言葉が、オシリスには王国があった。

・どちらの伝説にも悪の人間によるその貴重な持ち物を奪うための邪悪な策謀がある。

・どちらの伝説にも徳のある指導者の争いと殺人がある。

・どちらも兄弟に殺される(オシリスはテュポンに、ヒラムはジュベラム、彼のメーソン仲間(兄弟)に)

・どちらの遺体もあとで丁寧な埋葬を意図した、慌てた埋葬がされる。

・遺体の場所の目印として頭部にアカシアが使われる。

・どちらの伝説も二つの異なる遺体の捜索がある。

・どちらの伝説にも貴重な何かの喪失がある:ヒラムの死は秘密の言葉の喪失、オシリスの死は男根の喪失がある。

・どちらにも喪失した貴重なものの代用物がある。ヒラムに関しては秘密の言葉に代わる言葉、オシリスに関しては男根の代用物である。

オシリスと言う名前はエジプトのオーサレスAusaresが由来であり、それはさらに正確にはAsari或いはAs Ariから来ている。この場合、全て重要な音素ariがアリアンを表している。この音節はノルマン語で「神々」を意味する(Aesir、Asa、Asgardなど)。Asariと言う名は従って「アリアンの神」を意味する。オシリス信仰(アメン信仰の神で、冥界の神)は著者が信じるところでは西方から有史以前の時代にエジプトに転移した(伝えられた)。オシリスアイルランドの肥沃の神々の類似性は(そうでなければ)不自然である。

 

オシリスの名前、Asar、Asariをギザで見出すだけで充分である。同じ名前をフェニキアでMovers(Franz Karl Movers:ドイツの神学者)が見つけた。」
―サミュエル・F・ダンロップ*著「ヘブロンの異教徒たちThe Ghebers of Hebron」
*原文にはSamuel F. Dunlopとあるが、恐らくSamuel F. Dunlapの間違い。1898年発行。

 

語根As、Asa、Ash、Azarなどは神を指し、ジェホヴァJehovaの配偶者の名前Asheraにも見出される(そしてそれは単にBelの配偶者Astarteの異形である)。Asheraは旧約聖書の初期のもう一つの姿でアブラハムの妻、サラとして登場し、エジプトに到着後は名前が明かされていないファラオに嫁いだ。語根はアッシリアの火星の名前、Azarの名前に見いだされる。それはアッシリアの地名に見出せる。Syria、Ash、同様に古代猶太のリブナLibnahとアスドッドAsdodの間に存在したと信じられているAsanに見いだされる。それは、古代ペリシテの國、カルKaruの肥沃な森林地方であるアスカロンAskalonに見いだされる。

 

 

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多くのメーソンの前掛け、装飾帯、旗に見られる有名な棺桶の図柄はヒラム・アビフを指す。メーソンの伝説ではヒラムと共に棺に納められたのはソロモンの神殿の親鍵であった。棺の思想は明らかにオシリスの神話から引き出されている。

 

 

ヒラム、ヘルメス、ハーン

既に述べたようにヒラムは何かしらの長、親方であった。彼の名前を深く調べると彼が何の親方であったかが明るみに出る。

殆どの古代の書物(エジプト、ヘブライギリシャのような書物)に於いては母音が欠落していることから、ヒラムはHRMとすることが出来、それは再構成するとHERMESに変えることが出来る。

我々は、ヒラムがヘルメスの長 ―つまり錬金術師の親方であったと理解できる。

重要なことは、ヘルメスの名前はアイルランドのハーンになって跳ね返ってくる。ケルヌンノスやニコーNikor、グリーンマンとしても知られるハーンは鹿の角を持った古代アリアンの森の神である。この神は(オルフェウスやクリシュナのように)森の動物の中で穏やかに座って描かれているのが見られる。ハーンは片方の手に飾り輪を持ち、もう一方の手には蛇を持って居る。(上述のように、蛇はヒラム・アビフの話の中で顕著に大役をしている。)

飾り輪と蛇の図柄は数字の10を暗示し、今では十tenとして知られる。

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ギリシャ文字Hermesを合計すると数字の343が得られ、それは(足せば)10になる。ヒラムの名前が数字の10の秘密を暗示するならば、「父」、「親方」を意味するアビフは、単に数字の10が「父の数字」と考えられることを示唆する。実際、古代エジプトギリシャアイルランドの建築家や幾何学者はその数を珍重したのである。十は最も神聖な数であった。

(アトゥン・ラーAtum Raのような)原始の神々と(アダムのような)原型の人物は秘儀的に数字の十が関連していた。イングランドの数秘学ではATUMの文字(1,2,3,4)は合計すると10になる。

これはアダムの名前の文字ADAM(1,4,1,4)も同じである。人類の手は比喩的に1414 ―つまり一本の親指と他の四本の指がそれぞれの手にあり― を示し、故に1414(つまり10)である。故に、数秘学的証左は全ての人類が「アダム」であると宣言している。

「ヒラムの鍵The Hiram Key」と題されたメーソンの本では、著者のクリストファー・ナイトKnightとロバート・ローマスLomasがヒラム・アビフがエジプト第17王朝のファラオ・セケンエンラー・タア二世であったと議論する。(このファラオについて更に詳しくはこちら:http://en.wikipedia.org/wiki/Tao_II_the_Brave

 

 

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ジャック・ド・モレーJaques de Molay。14世紀のフランス・テンプル騎士団の団長である。伝えられるところでは、彼は異端者として王フィリップ四世に非難されたとなっている。殆どのテンプル騎士団の貴族のように彼もイングランドを訪れ、恐らくアイルランド出身のカルデアンCuldeanの修道僧から教育を受けた。メーソンの伝承が伝えるところでは、彼は「ヒラム・アビフ」の称号を持って居り、それは、ヒラム・アビフが(ダビデやソロモンなどと同じく)実際には称号であって個人の名前ではなかったという著者の議論に信用を貸してくれるものである。(テンプル騎士団について詳しくはこちら:http://www.femaleilluminati.com/article-2.html