世界の猶太人網(ヘンリーフォード著・包荒子解説)17

破壊思想の資金

現今猶太人の思想を代表する爲ではなくして、非猶太人の思想を左右すべき唯一の目的の爲に派遣されて居る少数の代表宣伝家以外には、何人と雖も到る処社会的及び経済的に破壊作用を営む分子が、猶太人の関係者によって指導されており、且つ資金を貢がれていることを敢て否定するものはあるまい。斯様な事実は可成り長い間、世人の耳目に触れずに済んで居ったものである。その理由は猶太人が極力否定したことと、今一つは世人に対して実情を明らかにすべき新聞情報機関の捜索が不十分であったためである。けれども今や事実は明白である。ヘルツル曰く「若し吾々が下落する時、吾人は革命的プロレタリアとなり、革命党の下士官となる者である」と、蓋し至言であって、此れは今より二十数年前即ち1896年に英語で始めて公表された言葉である。

猶太人の二運動

扨て現今に於いて斯の運動は、二つの方向に向かって働いて居る、即ち其の一つは全世界中にある非猶太人の國家を悉く破壊しようとするもの、第二にはパレスチナに猶太國を建設しようとするものこの二つの方向である。後者の計画は全世界にとって最善の希望であるが併し凡ての猶太人の最善の希望ではない、少なくとも大多数の猶太人の希望ではないのである。シオニストの連中は無論声を大にして之を叫んでは居るが、要するに之は代表的ならざる少数者であって、彼等は寧ろ野心漫々たる植民運動の連中であると見做すべきものである。然しながらシオニズム運動に対して大いに留意観察しなければならぬことは、此の運動は単に一つの植民運動と言うだけでなくして、此の運動の裏面に於て秘密の諸計画を実現しようとするものであることである。換言すれば公衆の注意をシオニズムの表面に集めて背後を見ない様に屏風を立てて居るものである。世界の政治的権力及び金権の支配者である所のインターナショナルの猶太人は、之に依って時と所とを論ぜず平戦の区別なく何時でも会合し得るものである。彼らはパレスタインを猶太人の爲に開かんが爲に手段方法を考究するのだと宣言し、斯の宣言によって世人の疑惑を免れつつ、密に何等か他の仕事を計画して居るのである。大戦中彼らは斯の如くして非猶太人國民の敵味方より何等妨害を受けることなく習合一致したのであった。既に1903年に行われたシオニスト第六回会議に於て最近の世界大戦は預言され、その推移と結果が告げられ、尚猶太人が平和会議に於て取るべき態度さえ大体に於て決定されて居ったのであった。

猶太國の建設とパレスチナの移民

此のことは何を意味するか、勿論猶太人のナショナリズムと言うものは存在して居る、併しながら猶太人が現在要求して居る計画と言うものが、単にパレスチナに猶太國を建設するというだけに止まって居ないことを明らかに意味して居るものであるのだ。猶太人は現今に於ては決してパレスチナに移住しようなどと言うことは考えて居ない。又シオニスト運動の爲にも、そんなことは望んで居ない。夫れ故若しも彼らが非猶太人國民からの離脱と言うことが行われたとしても、それは決して右の様な訳合(わけあい)から行われたのではなく、必ずや全く他の原因に因るものと見なければならない。

ドナルト・エ・カメロン(Donald aCameron)と言う人は、最近アレキサンドリア英國総領事の職にあった人で、此の人はシオニズムに対する非常な同情者で、猶太新聞にも屡々所論を発表したことのある人である。此の人の言に『猶太人の(パレスチナへの)移住民は三パーセントの利を得んが爲、互いに洗い合うことに依って、間もなく倦怠を感ずるにいたるであろう、そして猶太人の子弟達は汽車又は汽船に乗って十パーセントを利するため埃及(エジプト)に走るであろう…猶太人にして独立してパレスチナに生活するものは同族相食むの結果となり、軈て(やがて)は自己の國家を破壊するであろう』と。勿論未だ脱離の時機 -少なくともそれに対する原因は -到達しては居らない。

猶太政府の存在如何

現今少なくも仏、英、米が問題にして居る猶太問題の政治的方面は、猶太國民の現在の組織の問題と離れるべからざる関係にあるものである。猶太國民は遂にパレスチナに居を占めて一國家を有する迄待たねばならないものだろうか、或いは猶太人は今日既に一個の組織ある國家を為して居るものであろうか、猶太人は一体此のことを承知して居るだろうか、猶太人は非猶太人に対して外交政策を持って居るのか、又猶太人は斯様な外交政策を遂行する政府を持って居るであろうか、若し斯様な國家が存在するとすれば、斯様な國家は目に見えるものなると否とを問わず元首を持って居るであろうか、この元首は國務院を有って居るか、若し斯様な何等かの機関があるとすれば何人か之を知って居るものがあろうか。

猶太人の自覚的結合

右の各質問に対して目に見えない秘密な公共団体に教養されたこともなく、又これに遭遇した経験もない感情的な猶太人は、直ぐに否と答えるに相違ない。

併しながら以上の質問に対し、何人にも之を理解し得る様に解説する必要がある。今若しも此の世界に猶太人の自覚的結合なるものが毫も存在して居ないと仮定するならば、其の時は猶太人の成熟した政権及び彼等が採用する政策の一致は、彼等が等しく包蔵する同一方法の活動の単なる結果と見なければならない。果たして然らば吾人は、恰も英國についても同様に、英國海上の冒険を好むが故に之を駆って海上に勇飛せしめたと言い得るが、元来英人は海外に渡るということについては熟慮計画の結果やった訳ではなく、又植民的國民になろうと明らかに決心したものでもない、英人天賦の資が自然的に彼等を駆って海に赴かしめ植民的國民たらしめたに過ぎない。併し斯の説明だけで英國の世界的國家ということに対しる十分なる解説とすることが出来ない。

此れと同様に現に猶太人が住んで居る所へ猶太人を駆ったのは、猶太人の内的素質であることは明らかである、又吾々の面前に於て卓抜する事業を営ませたのも猶太人の内的素質に因るのであるが、猶これだけでは各國内に現住する猶太人間に存在する緊密なる連繋を説明したということが出来ないし、又世界的競争者たる猶太人ということ、及び彼らが猶太人以外の人類に対して粉砕的暴威を振るう異常事件を前以て驚くばかりによく知って居ること、並びに彼らの周密なる準備、即ち彼らが好機に乗じ疾風迅雷的に世界綱領を以てパリの講和会議に臨み、萬國をしてこれに同意せしめたその準備等の十分なる説明と見ることが出来ない。

之が為、吾人は先ず猶太人が他の諸民族と明瞭に異なって居る民族であるということ、而も彼らは或る目的の爲には通常自己の國民性を容易に放棄する民族であるということ、竝に彼らが事実上一國家を形成して居り、國民的自覚心を持って居るばかりでなく、共通の防衛共通の目的に対して自覚的に結合して居るものであるということを知らねばならない。此のことに気付いたのは最初諸政府中極僅少で二三政府の秘密局に過ぎなかったが、後には次第に識者が之を察知し、遂には國民の大部分もこれを推察する様になった。今吾人はテオドル・ヘルツルが猶太人という言葉の観念を規定するに方り(あたり)「共同の敵に因りて集結させられた民族」と定義したことを想起し、次に此の共同の敵とは非猶太人の世界なることを考えねばならない。自ら國民なりと自覚して居る此の猶太民族が、事実組織なくして個々別々に存在するということは、猶太人の狡猾性に照らしても受取り難いことである。世人若し合衆國内に於ける猶太人が、各種の組織を作って相結合し、而もその組織は何人も疑念を挿み得ぬ程巧妙であって、而も之を如何に確乎たる実行手段に依って保持して居るかということを洞察するときには、何人と雖も猶太人の住む限りの各國内に於ても、同様之を為し得べく又為されて居るということを結論し得るのである。

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