ドイツ悪玉論の神話075

ウィリアム・C・ブリットは、その頃、駐仏米國大使であり、同時に他の欧州諸國全体への大使でもあった。ルーズベルトと同じくブリットも「金持ちの家に育った」。彼は、フィラデルフィアの裕福な銀行家の家庭に生まれ、独逸の猶太人で米國に移民したジョナザン・ホロウィッツの子孫であった。ブリットは特にルーズベルトと親しく、ルーズベルトと「アンクル・ジョー(スターリン)」とソヴィエト連邦、それに対独戦への熱狂を共有していた。ブリットは、在ロンドン米大使、ジョセフ・P・ケネディジョン・F・ケネディの父)、在ワルシャワ米大使、アンソニー・ビドルなど、他の米國大使へのメッセージを送信する事に使われそしてこれらのメッセージは、ルーズベルトの独逸への好戦性を表していた。

1919年、ブリットは、ヴェルサイユ講和会議で、ウィルソン大統領の補佐官であった。この同じ年、ブリットは、レーニンと会談し、新しいボルシェヴィキ政府が連合國の承認の価値があるか決定するためにロシアに派遣された。ブリットは、ボルシェヴィキロシアで見たことに感銘を受け、ワシントンに帰國すると、新政権の承認を早くする様に勧めた。彼は、共産主義者の目的に非常に同調的であった。1923年、ブリットは米國共産党の指導者ジョン・リードの未亡人、ルイス・ブライアント・リードと結婚した。(映画「Reds」1981、ウォレンビーティ主演、は、ジョン・リードについての映画である。)ルーズベルトが大統領になった1933年、彼はブリットを外交官に復帰させた。彼の経歴を通して、ルーズベルトは、一貫して共産主義者か、共産主義同調者の人間と親しい関係を維持した。1938年、欧州への全米使節は、パリにいたブリットの下にあった。ルーズベルトは、國務省を頭越しに度々、毎日になる事もよくあるくらい、ブリットと直接電話で話し、米國外交政策について、正確に詳細且つ超極秘の指示をした。ブリットは、電話で昼夜を問わず、いつでもルーズベルトと繋がるようにしていた。ルーズベルトとブリットは親しい友人で、全ての外交政策の問題について見解が悉く一致し、特に独逸への敵意に於いて共鳴した。どちらも貴族であり、國際主義者を通じて世界をどのように造りかえるか、と言う見方も共有していた。そして、二人ともその壮大な再組織をもたらすように運命づけられていると見ていた。欧州でブリットはルーズベルト大統領その人の声と権威として話した。

 

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車に同乗するルーズベルト大統領とその「扇動代理人」ウィリアム・ブリット大使


駐ワシントンのポーランド大使、イェジ・ポトツキ伯爵は、ルーズベルト大統領が次の欧州大戦には米國を参加させる決定を下した、ということをウィリアム・C・ブリットが伝えた、とワルシャワに打電している。ブリットは、長い戦争が間もなく欧州で起きるだろうと予言した。「独逸とその総統、アドルフ・ヒトラーについて彼(ブリット)は、極端に熱を入れて、きつい憎悪と共に話した。彼(ブリット)は、戦争は6年続くかもしれない、と仄めかし、そして、それは、独逸が二度と復興できなくなるまで戦われるだろう、と宣言した。」とポトツキは、報告している。

ポトツキはブリットにそのような戦争はどうして始まるのか、と質問した。と言うのは、独逸が仏英を攻撃する可能性は非常に低かったからだ。ブリットはそれは、独逸と他の國との戦争で始まる可能性が高い、そして西側の軍がその後、独逸に対して干渉することになる、と答えた。ブリットは、いつか、最後は独逸とソヴィエト連邦の間での戦争を予言した。そしてその戦争には独逸がおそらく勝つだろう、しかし、その時には独逸は、疲弊してしまって、西側の軍事力に降伏しなければならないだろう。ブリットは、ポトツキに、米國は英仏が最初の動きを取れば、どの様な戦争でも参加するだろう、と保証した。ブリットが独波の問題について尋ねたとき、ポトツキは、ポーランドは独逸の要求をのまずに寧ろ戦うだろうと言った。そして、ブリットとルーズベルトも共にその立場でポーランドを勇気づけた。ポトツキは、独逸に対して好戦的な米國の態度を猶太人の影響のみに帰した。彼は、ワルシャワ米國輿論は単に猶太人の操作による産物であると、再三再四報告している。

ワシントンからワルシャワの外務省への1939年2月9日の報告の中で、彼は次の様に書いている。

ルーズベルト大統領と國務省への猶太人の圧力はこれまでになく強大になっている...(中略)猶太人は今や世界中を戦争に突っ込ませ、全般的大惨事をもたらす戦争精神病を作ることに於いて指導者である。この空気は、どんどん明らかになってきている。

彼らの定義による民主制國家に於いて、猶太人は現実の混乱を作った。彼らは、民主制と共産主義の考え方を混ぜて、とりわけ、反ナチズムの焼けるような憎悪の旗を掲げている。

この憎悪は、狂乱となった。それは、劇場、映画館、新聞などあらゆる場所にあらゆる手段で拡散している。独逸人は、全世界を征服し、そして全ての人間を血の洪水の中で溺れさせたいヒトラーの傲慢の下で暮らしている國民として描かれている。

猶太人の新聞の代表との会話の中で、私は、何度も戦争は避けられない、それは不変で革新的なものだという見方に繰り返し反論した。この國際猶太は、如何なる國家間の統合にも理解への傾向にも反対するためにあらゆる宣伝工作手段を利用している。この様にして、確信は着実に増大しているが、確かにこちらの輿論では、ファシズム体制の独逸とその衛星國は、「民主制の世界」に抑えられなければならない敵なのである。」

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