アメリカの國民性

アメリカの國民性6(完)-和辻哲郎1943.12

5. 開拓者的性格 以上によつて見ると、ホッブス的性格とベーコン的性格とは相結んでアメリカ開拓亊業の中に生き、さうしてこの開拓亊業を通じてアメリカの國民性を作り上げて行つたのである。從つて前述の二つの性格は開拓者的性格に於て統一せられてゐると…

アメリカの國民性5 -和辻哲郎1943.12

4. アメリカに於けるベーコン的性格の展開 アメリカ植民の最初の困難は、土人との戰ひと並んで、風土との戰ひであつた。周知の如く西ヨーロッパは世界でも稀な穏和な風土を持つてゐる。寒暑の開きが少く、夏冬を通じて同じ衣服で通せる。夏が乾季、冬が雨季…

アメリカの國民性4 -和辻哲郎1943.12

3. アメリカに於けるホッブス的性格の展開 前に言及したスペイン人のペルー・メキシコ等の征服は、基督教の名に於て行はれた。たとひ中部アメリカの土人が高度に發達した人倫的組織や壮麗な宗教的儀禮などを作り出してゐたとしても、それらは皆基督の福音を…

アメリカの國民性3 -和辻哲郎1943.12

2. アメリカへの移住 アングロ・サクソンのアメリカ移住は、丁度このベーコンやホッブスの時代のことである。ウォルター・ローリが二艘の移民を率ゐてエリザベス女王の名に負ふヴァーヂニアを開いたのは十六世紀の末のことであつたが、これはアメリカ土人の…

アメリカの國民性2 -和辻哲郎1943.12

ベーコンと同じ精神を特に實踐的な側面で顕著に表現してゐるのがホッブスである。 ホッブスによると、人には自然天賦の權利(jus naturale)がある。それは自己の生命を保持するためにしたいままのことをしてよいといふ自由である。かかる自由人を自然は平等…

アメリカの國民性1 -和辻哲郎1943.12

アメリカの国民性 1. アメリカ國民性の基調としてのアングロ・サクソン的性格 曾てバーナード・ショウがナポレオンを取扱つた喜劇『運命の人』の中でナポレオンの口を通じてイギリス人の特性描冩をやつたことがある。中々うがつた觀察であるから、緒としてこ…